注目の小さいメディアⅠ

朝日を開いても企画のお粗末さと文章の下手さにがっかりし、
かといって日経も、おじさん臭さと経済中心の作りゆえ100パーセントは
満足できず、週刊誌をめくっても突っ込みの足りなさと
芸能記事中心の作りに嫌気がさす。となると、満足いくニュースやら
切り口のある記事にたどりつくためには海外メディアしかない!
ということになりがちな今日この頃。
なんだか満たされない思いにかられながらも、小さくても気骨ある
メディアと英語メディアを組み合わせればなんとかやっていける気も
している。メディアとの付き合い方としては今後、自分の気に入った
小さいものをカスタマイズしながら、いくつかを同時並行で読みつつ
というのがあるべき道なのかもしれない。



ということで、最近お気に入りの「小さいメディア」をいくつかご紹介。


まず1つは、偶然外苑前のリブロのレジ脇にて出会ったフリーペーパー
『kate paper』です。広告が入りまくりで、中はスカスカ、読むところは
まるでなしというフリーペーパー概念をくつがえす充実ぶりに驚き。
発行元は下北沢にある「kate coffee」というカフェのようで、
カフェ発のフリーペーパーなんて内容も軟派に違いないという予想も
裏切ってくれる。http://www.katecoffee.jp/index.kate_news09.html
私が手に取ったのは3号目で、冒頭から「雑誌の危機」というか、紙媒体
のあるべき場所、今後の未来予想図を探る特集を組んでいる
仲俣暁生の「1984論」もあり)。



中でも注目なのは、出版業界紙新文化」の編集長・石橋毅史のインタビュー。
http://www.shinbunka.co.jp/(「新文化」のHP)
話は取次ぎの抱える問題点やら、再販制度のあり方についてなど専門的なところへ及ぶが、出版界に蔓延している「全体主義vs個」についての考察は示唆的だ。
それは例えば、ベストセラー本ばかりを取り扱う書店が増える一方、
個性的な小型書店が街から姿を消していくということに象徴的だけど
google bookの話もまた全体主義の流れの1つと言えるだろう)、
そんな外側の話よりも前に、これは作り手にかかわるはなしなのだ。

茂木健一郎勝間和代村上春樹に席巻されて売れるものしか
売れない全体主義的状況の中で、そこに埋れている”個”をきちんと
読み手の手に届くように発掘することもしかりだし、
売れるものだけ劣化版コピーで作り続けない責任も作り手には求められている。
もっとも、出版社の意思決定にかかわる人がどれだけの良識を
持ち合わせているのかということと無縁ではないわけですが。



でも個人的には、世界全体で進みつつある全体主義の流れにストップを
かけようとするのはまさに表現行為に他ならないし、
メディアはそことタッグを組んでこそ実は未来があるのではないかと思う。
などと、つらつらと考えさせてくれるいい特集を組んでいる試みを評価したい。



それでもう1つは、各出版社のPR誌(今月はこんな本が出ますという宣伝
のために各版元が出しているもので、書店では無料で手に入ります)の
中で、いつも次の号を楽しみにしてやまない紀伊国屋書店
「scripta」。これについてはまた長くなりそうなので、次回へ!